やがて春が来るまでの、僕らの話。


【倉田side】




ピンポーーーン


カッシーの家について、1度だけ押したチャイム。

怖がっているのか、ハナエちゃんの体が少し後ずさりした。

30秒ぐらい経って開いたドアから現れたのは、この部屋の主。


「あらいらっしゃい」


すっかり薬も抜け切って、バッチリ冴えた目で出迎えるこの男。


「いらっしゃいって、お前な…」

「なんかさ、起きたらおじさんが2人も部屋ん中にいたんだけど。不法侵入で訴えていい?」


なんにも覚えてない様子のカッシーに、深いため息が出る。


まぁそりゃそうか。

睡眠薬とアルコールの大量摂取。

副作用は記憶障害って、仕事中に調べたネットに書いていた。


「つーかなにお前、それ1人で飲む用?」


玄関先でカッシーが視線を向けたのは、ハナエの手元。


「ビール1缶って……普通みんなの分持って来んだろ」


視線の先にある、目を冷やしていた缶ビール。


を、


ハナエちゃんはカッシーの腹目掛けて、思いっきり投げつけた。