やがて春が来るまでの、僕らの話。







「ごめん、冷やすのこれしかなかった」


目を冷やすためにって、律くんが冷蔵庫から取り出してくれたのは……缶ビール。


「まぁ、ないよりはいいじゃん?」

「うん、ありがとう」


もらったビールはひんやりしていて、熱い目にはぴったりの冷たさ。

目に当ててみたら、熱を持った瞼にじんわり沁みてくる……


「それ持ったままカッシーんとこ行く?」

「うん」


ビールを瞼に当てたまま、玄関で靴を履く。

私の後ろで棚から鍵を取る音が聞こえて、急いで靴を履いて先にドアを出た。

後ろから出てきた律くんが、靴をトントンしながら部屋の鍵を閉めている。


「よし、行こう」

「、」


行こうって言って、手を引くように繋がれた。


「彼女、なんでしょ?」

「うん」

「手ぐらい繋ぐもんじゃん?」

「うん…」

「なんで泣くんだよ」

「、…ごめ」


ビールで顔を隠すみたいに、涙を堪えた。


悲しいんじゃない。

怖いんじゃない。

どうしようもなく安心するだけ。

律くんの服を一方的に握っているときよりも、ずっとずっと安心するだけ。


律くんがいてくれて、本当によかった……