やがて春が来るまでの、僕らの話。



「…ねぇハナエちゃん」


胸から響く声が心地よくて、ただ耳を澄ませていると……


「また、ここに住む?」

「え…?」


想像もしていなかった言葉が、届いた。


「今度はさ、仕事が見つかるまでとかそんなんじゃなくて、普通に。……一緒に住まない?」

「……普通に、一緒に?」

「って、遠回りな言い方したけど。要するに……」

「……」

「彼氏と彼女として、一緒に住もう」

「、…」



私を抱きしめたまま、律くんは一つ一つの言葉をとても大切そうに紡いだ。


どうしてだろう、柏木くんとのことは、考えて考えて考えすぎてしまうのに。

何かを考える必要もないくらい、律くんの想いは真っ直ぐ伝わってきて……

私は胸の中で、泣きながら「うん」って頷いた。



「……よかった」

「、…」



体を離して、近づく距離に目を閉じて……


律くんがキスをする直前に呟いたのは、



「ハナエ…」



陽菜たちがいつも呼んでくれた、

私の名前だった……