やがて春が来るまでの、僕らの話。




「ハナエちゃん…?」


1人静かに立ち上がった彼女は、カッシーに何も言わずに玄関のほうに向かって行った。


「ハナエ、…!」


涙を拭ったカッシーが立ち上がって追いかけようとしたけど、まだ薬が抜けきれてないのかフラフラして倒れこんだ。


「俺が行くから、お前もう少し寝てろ」


そう告げて、俺は彼女を追って外へ出た。











夏の夜空に、星がいくつも光ってる。

夏の匂いを感じながら辺りを見渡したら、丁度自分の車を止めている横に、ハナエちゃんがしゃがみ込んでいた。


「…どうした?」


隣に、同じようにしゃがみ込む。

しばらくしてもなにも返事のない彼女に、もう1度なにかを尋ねようとしたけど。

見えた体が未だに震えていることに気づいて、一瞬言葉に詰まった。


「…大丈夫?」


父親のことや母親のこと、そして陽菜のこと。

その全てを背負ってきた体には、今回のカッシーのことだって相当な傷になっているはず。


俺だって震えたんだ。

ハナエちゃんが震えないはずがない……