やがて春が来るまでの、僕らの話。




「ねぇ」


テーブルに頬杖着いたむっちが、また俺たちの空気を変えた。


「カッシーはさぁ、陽菜に会いたいのかなぁ」

「……」

「会ってなにがしたいんだろう」

「、」


ハナエちゃんが、俺の隣で俯いた。


陽菜。

その名前は、どうしたって胸を貫いて痛いから……



「陽菜が泣いてるって……柏木くん、そう言ってた」


泣きそうな声で、ハナエちゃんが言う。

怖いのか、その手がまた俺の服を掴んでる。


「泣いてるの、陽菜じゃなくてカッシーのほうじゃん」

「え?」

「陽菜とハナエがいなくなってから、あいつずっと泣いてんじゃん」

「、…」

「1人でずっと、泣いてる」

「……」


俺の知らない高2からのカッシーを思い出しているのか、むっちの言葉には重みがある。


でも、1人って……

傍にいれなかった俺が責められているような感覚がして、やっぱり胸が痛んだ。



「……1人じゃないよ」

「ん…?」

「柏木くんは、1人じゃない…」

「……」

「今も昔も、ずっと…」


ぎゅっと掴まれる服を放さずに、彼女は続ける。


「若瀬くんだって律くんだっていた……ちゃんと、皆がいた」

「、」

「私だって、…いつも柏木くんのこと想ってた…」




俺の服を握りながら、ハナエちゃんの声はカッシーを想う。




ねぇ、ハナエちゃん。


カッシーを想ってるのに、どうして今、カッシーの傍じゃなくてずっと俺の横にいるの…?