やがて春が来るまでの、僕らの話。



「なぁ、俺どうにかしてやりたくてもこの店のことには首突っ込めねぇんだよ」

「……」

「どうにかしてやれんの、一緒に働いてるお前だけだろ?」

「……」

「イライラする気持ちもわかるけど、まずは本当の犯人、」


杉内のグラスを拭く手を見ながら話してたら、急にその手の動きが止まった。


なにかと思い見上げた杉内の視線は俺のほうなんて見てなくて、従業員が出入りする奥の通路を見ている。


え、なに、


「ちょっと俺、抜ける」

「え、」


真面目な顔してそう言った杉内は、仕事放棄でバーカウンターから出て行った。


いや、抜けるって……俺じゃなくて向こうにいるもう1人のバーテンに言うべきじゃない?


そんなことを考えながら、杉内の姿を目で追っていく。



「……」



安堵の息が漏れた。

俺がわざわざ言わなくたって、杉内はちゃんとわかってたんだなって。

だってカウンターから出て詰め寄って行った先が、この店の店長のところだったから。


店長に必死になんの話をしているかなんて、聞こえなくてもわかるから。

必死に話すその様子を見てたら、この問題はきっと杉内がどうにかしてくれるって、すぐに安心できた。