やがて春が来るまでの、僕らの話。


【倉田side】




「……」


遠くなっていく車を見送った後、マンションの中に戻ってく。

階段を上って玄関に入ってすぐ、まだ窮屈なスーツ姿でいる自分に気がついた。


早く楽な格好になりたくて、ネクタイを外しながらリビングに入る。

そこには、ベッドで寝ろって言ったはずのカッシーがまだ床の上で寝ていた。


「カッシー、まじで風邪引くからベッド行けって」

「んー…」


声には反応してくれるものの、動く気配は全くない。



「つーかお前、なにしに来たんだよ……」

「んふふー…」


目を瞑ったまま笑うカッシーに、またため息が出る。


もうここから動きそうもないなって、仕方ないから布団を持って来ようって歩き出したとき。


カッシーは言った。



「ごめんねー律くん。邪魔しちゃってー…」



立ち止まってカッシーを見たけど、目を閉じたままで。



「邪魔するつもり、なかったんだけどさー…」



聞こえた言葉に、今日の中で1番大きなため息が出た。

きっとカッシーにも聞こえたであろう、大きなため息……



「嘘つけよ…」

「……」

「わざと邪魔しに来たくせに」

「んふふ…」

「……」




運んできた布団を掛けたら、カッシーはすぐに眠りに落ちていった……