やがて春が来るまでの、僕らの話。



「倉田くんって、頭カッタイのねぇ~」



シリアスになっていた俺の隣から、トゲが飛ぶように言葉が突き刺さってきた。



「はは、光男が正論を言った」



正論って……。



「いいじゃない、思いだしたって」



カラン……と音がしたのは、みっちゃんの手の中のグラスの氷が溶けた音。



「辛かったことを1人で思いだす寂しさってのは、耐え難いものよ」

「……」

「同じ思い出を共有してるなら、一緒に思いだせばいいじゃない。辛ければ辛い思い出の分、1人よりも誰かとわかり合えるほうが救われるでしょ?」

「………」

「今は周りにヒデトたちがいるから分からないかもしれないけど、誰もいなくなったときにきっとわかるわよ。1人で思いだすよりも、みんなで思いだすほうがよっぽど救われるんだって」




みっちゃんの言葉に、俺でもいいのかなって、

思い出を共有するのが、俺でもハナエちゃんは救われるのかなって。


わかんねぇけど、見渡した店内の奥のほうでハナエちゃんがテーブルを拭いているのが見えたから、俺の足は自然とイスから下りて歩き出していた。


彼女の元へ……