やがて春が来るまでの、僕らの話。



学年が違った俺はこいつらの日常を全部把握出来ていた訳じゃない。


常に一緒にいたわけでもないし、どんな風に授業を受けていたのか、どんな風に休み時間を過ごしていたのか、どんな風に恋人同士になったのか。


ぶっちゃけ俺は、何にも知らない。



「聞いたの?」

「ん?」

「それ、その話し。志月とかハナエちゃんに直接聞いたの?」



なんとなく思ったのは、付き合いだした馴れ初めや経緯を、誰かに話す様な2人には見えないってこと。


「別に、聞いた記憶はねーけど」

「じゃあ……」

「……」

「見てて気づいた、ってこと?」

「………」



ハナエちゃんは志月のこと好きじゃないって、見てて気づいたのか。

カッシーがなにも答えなくなったことが、彼からの答えのような気がした。


またため息が出そうになったけど、ため息の変わりに出たのは聞こえないくらいの小さな声。




「………どんだけ見てたんだよ、ハナエちゃんのこと」




そして俺は、どれだけ見ていなかったんだろう。


みんなの兄貴みたいに大人ぶってたくせに、俺はなんにも見ていなかった。


ハナエちゃんのことだけじゃない。


こいつらのことも、そしてきっと、陽菜のことも。


あの時、死んでしまった陽菜がなにを考えていたかなんて、俺はきっとなんにも知らない。


兄貴ぶってたくせに、知らなすぎる。


こいつら以上に、きっとなにも……