やがて春が来るまでの、僕らの話。


【律side】




「ほら、風邪引くから布団かけて」

「うーい…」


おかしな返事をするハナエちゃんに布団を掛けた。

うつ伏せている彼女はもう既に目を閉じていて、きっとすぐに夢の世界へ落ちていく。


「じゃあおやすみ」

「うーい…」



返事を確認して、入口にある電気のスイッチを消した。

もうきっと寝ているだろうから、静かに部屋を出ようとしたその時。



「……律くーん」



名前を呼ばれた気がして振り向いた。


呼んだ?

いや、気のせい?


分からなくて、彼女の元に静かに戻った。



「……なに?」



聞き返してみると、酔っ払った彼女は暗闇の中でふふふっと笑った。




「このベッド、安心する……」

「……」



心臓が、静かに弾け飛んだ。


抑えろ。

抑えろ俺。



ろれつの回っていない彼女がめっちゃくちゃ可愛いからって、別に今の言葉に深い意味はない。

俺と寝てたベッドだら安心するとか、そんなんじゃ、



「律くんといるのが、1番安心する……」



「、……」