やがて春が来るまでの、僕らの話。



「新しい家はもう慣れた?」

「うーん、どうだろう」


4ヶ月も律くんの家に住んでいたからかな。

正直、今の家にはまだ慣れない。


「やっぱりね、まだ律くんの家の方が落ち着く気がする」

「そう?」

「うん、今日2週間ぶりに来たけど、おじゃましますっていうより、ただいまって感じがしちゃって」

「はは」

「ほんと何様だって感じだよね」


帰る家もなかった私が、久しぶりに感じた感覚だった。

「ただいま」って言いたくなるような、そんな感覚。



「いつでもおいでよ」

「え?」

「いつでもさ、気が向いた時に来ていいから。俺も今日ハナエちゃん来た時、いらっしゃいじゃなくて、おかえりーって気分だったし」



微笑んだ律くんの優しさに、頬が緩んでいく気がした。

この人は出会ったときからずっと優しい。


そういえば、高校時代の第一印象も「優しそうな人」だったな。