「こんな所で死んだら怒られる気がして……もう二度と、笑いかけてくれない気がして…」



そしてなにより……



「私が死んだら、泣いちゃう気がしたの…」



どうしてそんなことを思ったのかはわからない。

何も言わずに姿を消すような私の為に、涙を流すはずないって分かってる。


だけど本当に、そう思ったの……



「そっか、ハナエちゃんはその2人のこと、すごい好きなんだね」

「……好き?」

「だから頭に浮かんだんでしょ?」

「……」

「羨ましいな、そんな友達がいて」

「……、」

「なかなか出来るもんじゃないよ、傍にいなくても大切な友達って」

「っ……」



私だって南波くんのことが羨ましいのに。

羨ましくてたまらないのに。



「そういう友達がいるって、十分意味のある人生じゃん?」



振り向いて笑った後、南波くんは再びキャンバスに向かって筆を進めた。



「……ありがとう」

「ん?」

「話、聞いてくれて……」



きっとその為に、ここに連れて来てくれたから。



「ありがとう、南波くん……」



私の声にもう一度笑った彼の指先から描かれる色は、


あの町に降る雪のように、真っ白だった……