やがて春が来るまでの、僕らの話。




「あと呼び方も変えよう」

「呼び方、ですか」

「倉田先輩ってのも堅苦しいから……んーと、下の名前でいいや」

「…下の名前」

「え、もしかして俺の名前知らない?」

「いや知ってます、倉田律先輩です!」


まさかの誤解を与えてしまって、超特急で誤解を解いた。

こんなに親切にしてくれる人の名前を知らないなんて、失礼すぎるから。


「じゃあ呼び方は名前で」

「名前、ですか…」

「そう、言ってみて?」

「律、さん?」

「“さん”だと先輩と変わんなくない?」

「じゃあ、律……たん」

「ちょ、どこのバカップル」


ブハッと笑った先輩は、なんだかとても楽しそう。


「あの、なんて呼べばいいのかわからないです…」

「じゃあまぁ、無難に律くんでいっか」

「律くん」

「うん、それだね」


律くんと過ごす、穏やかな土曜日。

穏やか過ぎる土曜日。

きっとこの7年間で、1番穏やかな土曜日を過ごしている。