やがて春が来るまでの、僕らの話。



先輩の優しさに甘えてもいいのか分からなかった。

家族でも彼女でもない私が、本当にこの家に一緒に住んでもいいのか分からない。

分からないのに、話しはポンポンと進んでいった。


「これ部屋の鍵ね。あと住所この紙に書いといたから。それと風呂は好きな時間に自由に使って。あ、タオルとかこの棚ん中ね」

「……」

「家の中の物はほんと自由に使ってくれていいから。冷蔵庫とか洗濯機とか遠慮せず使ってね」


いいのかな、ほんとに。


「あとはー、そうだ、俺こっちの部屋で寝るから、ハナエちゃんは寝室のベッド使って」


……ベッド?


「それはダメです!」

「え、ダメって?」

「私居候の分際なんでその辺の床で十分ですっ、ベッドは先輩が使って下さい!」

「いやそれはダメだよ。女の子だし」

「ダメじゃないです、私ベッドなんて使うような身分じゃないので」

「いや身分とか関係ないから」

「ダメ!絶対ダメ!」

「いや俺もダメ。絶対ベッドで寝ない」

「私だって寝ません」

「ちょっとハナエちゃん、そんなに頑固だっけ?」

「先輩こそ、ベッドで寝てくれないなら私出て行かせてもらいます!」

「はぁ!?」