やがて春が来るまでの、僕らの話。



約15分後、目的の場所へタクシーは止まった。


「着いたよ」


降りてすぐ、彼女を招くように歩きだす。


「…ここ?」


入って行くのはごく普通のどこにでもあるマンション。

オートロックの鍵を開け、目指すは三階の角部屋。


部屋の鍵を開けてすぐの靴箱に、いつものクセで鍵を置いた。


「どうぞ」


覗くように足を踏み入れた彼女は、玄関先で俺を見上げた。


「ここって」

「俺の家だから、上がって」


訳が分からないといった表情をしながら、彼女は静かについてきた。

まさか女の子が来るなんて思ってもいなかった室内は、男の部屋って感じに汚れてる。

でもまぁ、今は仕方ない。


「適当に座って」


俺の声に従うように、ハナエちゃんは黒いソファーに静かに座った。

隣に座り込む俺を、未だ不安そうに見てくる。

俺と二人でいたくないのかもしれない。

俺といると、あの頃のことを思い出して辛いのかもしれない。

だったらもう二度と会わない方がいいのかもしれない。



でもさ、


でも……



「ハナエちゃん」

「……はい」

「一緒に、ここに住もう」