やがて春が来るまでの、僕らの話。




「えーと、なにくん?」

「なんばくんです」

「なんばくんね。で、君は?」

「あ、谷ハナエです」


警戒心をなくして、私は初めて彼に名乗った。



「改めまして、杉内幸一郎です!どうぞよろしくっ」




へんてこりんな出会いだなって、そう思った。

でも南波くんが言ったキセキがここに繋がっていたのなら、もしかしたらこの出会いにも意味があるのかなって。

勝手にだけど、そんなことを考えたりした。


なんて、そんな深い意味はないだろうけど。




キィー…




店のドアが開く音が聞こえた。



「あ、いらっしゃい。今日は仕事終わるの早かったね」

「週末くらい早く帰りたいからね」



背中越しに聞こえる声は、私たちがいるカウンターへ近づいてくる。

杉内くんの友達かな?



「そうだ。この子、昨日おみくじ落とした子だよ」



え、私のこと?

拾ってくれたの、杉内くんじゃなかったの?



「あー、おみくじの」

「ハナエちゃん、こちらおみくじ拾ってくれた律くん」



カウンターに座ったまま、声の方に振り向いて、





「え……」

「……え?」





目が合った私たちの時間は、



共に止まった───…