やがて春が来るまでの、僕らの話。




「このお店?」

「うん」


もう二度と来ることはないと思ったのに、昨日の今日でまた来ることになるとは……



キィー…



気まずいけれど仕方なく、お店のドアを開けて中に足を踏み入れる。

昨日と同じように薄暗闇に灯るオレンジのライトの向こう……

バーカウンターの中に、やっぱりいた。

杉内幸一郎だ。



「あ、また来てくれたんだ!いらっしゃいませ~」


彼は私を見るなり満面に笑った。


いや、違うんです。

私はただ落し物を探しに……


「そうだ、これ君のじゃない?」


入って早々、カウンターに近づく私に差し出された物。

白い、小さな紙切れだ。



え、これ、……



受け取ったのは、間違いなく陽菜から貰ったおみくじだった。



「これ、え、これ!?探してたの、これだよね!?」


南波栄太が汚い格好のまま、カウンターの前で興奮して私を見ている。

私は受け取ったおみくじを、半泣き状態で噛み締めるようにぎゅっと握った。



「うん、うん!……これ!」

「や、……やったーー!!」



南波栄太が万歳をして喜んでいる。

店内に響く声をあげ、感極まる私の代わりのように喜んでいる。