やがて春が来るまでの、僕らの話。




「大事なもんでも落とした?」

「、…」



すごくすごく大事な物を、私は落とした。

大げさに聞こえるかもしれないけど、命よりも大切なもの。


バカにされたっていい。

本当にあのおみくじは、私の命みたいな物だから……



だけど……



「いいんです、もうきっと見つからないから…」

「……」

「小さいおみくじの紙だし、キセキでも起きない限り見つかるわけないんです」

「でも大事な物なんでしょ?」


弱気になっていた私の前で、名前も知らない彼はその場で鞄の中をゴソゴソと漁りだした。


「あの?」

「俺ね、絵描いてんの」

「絵?」

「そう、路上でね、来てくれたお客さんに絵描く商売してんの」



路上で絵……


え、だからなに?



「ちょっと待って、すぐ出来るから」



もしかして今、絵を描いてるの?

突拍子もないその行動は、はっきり言って意味が分からな過ぎる。


関わらない方がいいかもしれない。そんなことまで頭を過った。