やがて春が来るまでの、僕らの話。


【ハナエside】




結局満喫に泊まることにした。

ほんとは広いお風呂に入りたかったのに、全部あの男のせいだ。



「……杉内幸一郎」


貰った名刺を手に取り眺め、満喫の狭い個室にゴロンと寝転ぶ。


なんだったんだろう、あの男。

ほんとに本気で謎すぎて、超怪しい。



「まぁもう会うこともないだろうから、なんだっていいんだけど」


そんな事を考えているうちに視界はどんどん狭くなり、気が付くと眠りに落ちていた。


ふわふわしたまどろみの世界に誘われ、心地良い夢が始まりそうだ。


だけどなんだか少し寒いな。


雪、降りそう。


あれ、私が今いる場所は雪降るっけ?


そうだ、ここは雪の降る小さな町。


十二月になると辺り一面真っ白になる、とてもキレイな雪の降る町だ……





“ハナエー、雪だるま作ろー!”




陽菜が呼んでる。




“だからお前らいくつだっつーの”




柏木くんが笑ってる。




“じゃあまたカッシーの家集合ね”




若瀬くんも笑ってる。




“ったく、またかよ”




倉田先輩も笑ってる。



柏木くんの家に行かなきゃ。



きっとみんなが待っている。



早く行かなきゃ。




早く……