やがて春が来るまでの、僕らの話。




「カッシーはさ、あいつ平気そうな顔してるけど、陽菜のことでほんとはすげぇ苦労してんの。毎日夜中に電話掛かってきて、出るまで何十回、何百回と着信残されて。出たら出たで会話にならないほど泣かれて、死ぬとか裏切り者とか散々言われて」

「……」

「あいつそろそろ、陽菜と一緒に心壊すんじゃねぇかって。……たまに本気で思うときがある」

「、…」

「俺がカッシーの立場だったら、あいつみたいにしてやれるかはわかんねぇな」



柏木くんの立場。

依存をされてまで一緒にいる柏木くんにとって、陽菜はどれほど大切な存在なんだろう。



「ほんと言うとさ、あいつが陽菜のことどう思ってんのかもわかんないんだ」

「え?」


若瀬くんはどこか遠くを見るような目で、いつもよりずっと静かな声を出している。


「ただわかるのは、陽菜にとってカッシーは絶対に必要な人間で、心の安定を保つひとつの薬みたいなもん」

「……」

「だから時々思うんだ。カッシーが陽菜の元を離れたら、きっと陽菜……」

「…?」

「まじで死ぬんだろうなって」

「、」



“それをわかってるから陽菜と付き合ってるのかもしれない”


若瀬くんは最後にそう言った。



ずっと傍にいる若瀬くんですら本心には触れられない。

きっとその本心に触れた時、何かが音を立てて崩れるから……