『──穏やかな日差しが差し込み、桜の蕾たちが少しずつ膨らみはじめ、春の訪れを感じる季節となりました。──』




穏やかな、あたたかみのある伊吹の声がホール全体に響き、私はそれに目を閉じて耳を研ぎ澄ませた。




『卒業生代表、天野伊吹。』




舞台の上でスピーチを終えた伊吹は綺麗な姿勢でお辞儀をしていた。




あぁ、私たち卒業するんだなぁ。

そう感じるのは今日だけでも何回目だろう。




胸に飾られた桜の花のブローチをそっと握り、伊吹の姿をただ目に焼きつける。




──3月、別れの季節。


私たちは今日、高校を卒業する。