『たまには勉強の息抜きに花火大会でもどうですか!!』




瑛茉の誘いは、正直いってめちゃくちゃ嬉しかった。



けど人混みは嫌いだし、それで人酔いして機嫌悪くなって瑛茉に迷惑をかけるのも嫌で。



でもやっぱり瑛茉と行きたいという気持ちが勝ってしまった。



2人でいいから!なんて理想的な言葉に俺は軽々とOKを出してしまったんだ。




俺としてもそりゃあ瑛茉と…好きな子と2人で花火みたいし。


欲を言えば浴衣もみたいし。




…ダメだ、キスをしてしまったあの日から欲をセーブできなくなってきている気がする。




なのに…


「瑛茉?」




少し目を離した隙に瑛茉はいなくなっていて。


というか、中学の時の塾の同級生につかまっていて瑛茉がいついなくなったのかすら分からなかった。




「伊吹くん?聞いてる?」




ひょこっと顔を覗き込んでくる宇野には悪いけど、話なんか全然耳に入ってこなかった。



「…ごめん、俺瑛茉のこと追いかける」


「伊吹!?天羽トイレ行くって言ってたぞ!?」


「伊吹くん!」




なんでこんな動きずらい浴衣なんてものを着てきてしまったんだろう。


なんて考えながら、大嫌いな人混みをかき分けて瑛茉を探した。