ブーッ、ブーッ、ブー…


「…あれ、スマホどこやったっけ」



(そうだ、カバンにしまったんだった。)




「もしもし、伊吹?」


『遅い』


「…ごめん、スマホ見てなかった」


『…そんなにあいつとのデートが楽しかった?』

「え?なんて?」




ボソッと呟いた伊吹の声は私には聞き取れなかった。


きっと雨音のせいだ。


梅雨入りしたせいか、さっきまで小雨程度だったのにいつの間にかザーザー降り。



(雨、嫌いなんだけどな…)




『…LIMEすら見てないのかよ…瑛茉のせいでお腹すいてるんだけど』


「え…もしかしてご飯食べてないの?」


『今日は父さんも母さんも帰ってこない』