「それは……自分。やられっぱなしでも、ヘラヘラしてる弱い自分が嫌になるんだと、思います」

「そう。それなら、俺はそれを否定する」



思わぬ言葉に、私は先輩の横顔を見つめた。



「本当に弱いと言うのならば、君はとっくの昔に消え失せてしまっていて、俺たちが今ここで出会うこともなかった。それこそが、君が弱くはないという証さ。きっと、毎回どこかで乗り越えられる要所があったろう?」

「そんなの、その時代のことなんて、私は覚えていないので分かりません」



ただ毎日が辛いだけ。

他人も憎いけれど、自分自身も憎い。

ああ、考えただけで、また頭が重くなってきた。

頭を抱えたとき、先輩が私の肩を優しく2度叩く。

私が顔を上げると、海の方を指差す。



「あ……」



そこには、鮮やかに沈み行く夕陽があった。

海に溶けて行くようで。

毎日、通って、見ているはずの景色。

一度も気付いたことは、無かった。