「嫌だ」

「え」

「離さないよ」



突然の真剣な声色に圧される。



「今、君を離したら、まだ危ういと思うから」



そうだよ、私。

さっきまで必死だったんだから。

忘れて、どうするの。



「これは私の問題です。先輩には関係な──」

「関係無いなんて、言わせない」



強い調子で言う。何故かしら、怒っているような雰囲気が感じ取れる。



「4度も、君を見つけられたのに」

「……どういうこと、ですか?」

「いろんな時代で、君を見かけていたよ」

「『時代』なんて。先輩、何言ってるんですか」



突拍子もないことを言う先輩を、少し笑ってしまう。

しかし、先輩は穏やかに、懐かしんで居た。



「ああ。明治、大正に江戸時代より、ずっと前から。どの時も君は、無茶をしていた。ちなみに、これで君と出会えたのは、これが5度目さ。5度目にして、ようやく言葉を交わせた」



口元が弧を描いているのが、少し見える。

そんな風に、嘘みたいな話を至って大真面目に話す先輩には、とうとう何も言えなかった。

それから先輩は、また話を続ける。