さっきまでの 日差しが 嘘のように

空は どんどん 暗くなっていく。


スコールっていうと カッコいいけど。

要するに 夕立のことでしょう?

雨の後は 少し 涼しくなるのかな。


ホテルに向かう タクシーの窓から

ぼんやり 外を 眺めながら…


カンナさんと ばったり会ったのは 5月の終わり。

GWには 奏斗と旅行をしたり

それまでの私達は 平和だったのに。


カンナさんは まるで 見ているかのように

私が 奏斗と一緒にいる時に 電話をしてくる。


奏斗が 私の前で カンナさんと話す度に

針が刺さるように 心が チクチク痛んで。


「ねぇ。私の前で カンナさんと 話さないでもらえる?」

夏休みが 近付く頃 私は 奏斗に言った。

「えっ?葉月に 聞かれて マズいこと 話してるわけじゃないし。葉月に 聞こえない所で 話す方が 嫌だろ?」

奏斗の思いやりは どこか ズレている。

私は 奏斗が 電話に出ることが そもそも 嫌だから…


「でも… 私 聞きたくないから。」

私は 少し 顔を強張らせ 奏斗に言った。

「そうか… わかった。」


それ以来 奏斗は カンナさんの電話に出ると

私から 離れるようになったけど。


私の胸は もっと チクチクして。

奏斗の声に 耳を澄ます自分が 

どんどん 嫌いになってしまう…


それでも カンナさんが 

奏斗を 呼び出すことは なかったから。


私は ギリギリの瀬戸際で 自分を支えていた。

あの 日曜日… 奏斗が 行ってしまうまでは…