10月の終わりの 寒くなり始めた夜。

2人で食事を していた時に

奏斗の電話は 鳴る。


「ゴメン。」と言って 通話ボタンを押す奏斗。

私の前で 話すことで 疚しくないと 言いたいのか…

「はい。…うん。うん…はぁ?どうして?うん…管理人に聞いた?うん。うん…わかった。今から 行くよ。うん…」

私は フォークを置いて 奏斗を見つめる。


「葉月 ゴメン。カンナが 部屋の鍵 失くしたらしいんだ。今 部屋に入れなくて 困ってるから 俺に 来てほしいって…」

「どうして?奏斗 鍵開け名人なの?奏斗が行っても どうしようもないじゃない。」

私は 呆れて奏斗を見る。

「カンナ どうすればいいか わからないらしくて。俺 ちょっと 様子見て 戻ってくるよ。」

「大家さんに 聞くとか。鍵の110番 頼むとか。どうにでもできるでしょ?カンナさんて いくつ?何で いちいち 奏斗を呼ぶの?」

「誰も 頼る人が いないから…仕方ないんだよ。」

「いいよ もう。行って。そのまま カンナさんのそばに ずっと居れば?」

「何言ってるんだよ 葉月。鍵 開いたら 戻って来るって。」

「それまで私に ここに 1人で居ろって?奏斗 おかしいんじゃない?もういいよ。早く行けば?」

「ごめん。後で 部屋に行くから。ゴメン。」


どうして 奏斗は カンナさんを 無視できないんだろう。

1人で アパートに帰りながら

私は 情けなくなってきた。


もし今 私が 襲われたら

奏斗は どう思うかな…


カンナさんの所に 行ったこことを 後悔するのかな。


1人 歩く道は いつもより 暗くて。

時々 強く吹く風が 妙に 冷たく感じた。