もぐもぐと口を動かしながら目をキラキラさせるミレイナを、ジェラールは一見すると無表情に眺めている。
 しかし、よく見るとほんの少し口角が上がっており、普段は鋭い目元が柔らかだ。

(なんか、嬉しそう……?)

 ララに餌やりをするとき、ジェラールはよくこんな表情をしていた。期せずして当時のことを思い出して、頬が紅潮してしまう。

 ジェラールが紅茶を飲み干すと、隅に控えていたレイラがカップに紅茶を足す。ジェラールはレイラに「もう下がってよい」と命じた。

 今日も去り際にジェラールから見えない角度で憎々しげに睨まれ、ミレイナは苦笑する。

(きっと、明日あたり色々と言われちゃうんだろうなー)

 考えるだけでも憂鬱になる。
 まあ、気にしなければいいだけなのだけど。
 ジェラールはそんなミレイナの苦笑いに気付くことなく、さっと立ち上がった。

「今日は、これを渡そうと思ってな」

 ジェラールは立ち上がって、再度テーブルの引き出しから何かを取り出した。差し出された手の上には、太さの違う金チェーンが数本載っている。

「あ。これはもしかして、先日の褒美の品としてお願いしたものですか?」