これを恋と呼ぶのなら


「俺はたまたま仕事で帰りが遅くなっただけ。途中でコンビニに寄ったらお前がそんな格好で彷徨(うろつ)いてるから、あとをつけた」

 ーーそんな格好って。

 私は半袖Tシャツと丈の長いスカンツを見て首を傾げた。

「一発で女って分かる格好で夜道を歩くな」

 そういう意味かと悟り、口ごもる。何て言ったらいいのか分からなかった。

「色々あって、落ち込んでたのよ」

「それで川を見ながらのやけ酒?」

「う、うるさいぁ。色々あるのよ、私にも」

「へぇ〜。たとえば? ……失恋とか」

 図星を突かれてグッと唇を結ぶ。

 恥ずかしくてたまらなかった。

 こんな馬鹿みたいな醜態の一部始終を見られていたのも、その理由を言い当てられたのも、勿論そうだが。

 既に失恋済みの幼馴染みに慰められるのかもしれないと思うと、情けなくてこのまま消えてしまいたかった。

「なるほど、前に言ってた年上の彼氏にフラれたわけか」

「違うわよ、別にフラれたわけじゃなくて」

「なんだよ?」

「浮気してたの、親友と。多分……二股かけられたんだと思う」

 暗い川を睨みながら、膝に置いた手をグッと握りしめた。