これを恋と呼ぶのなら


 それでさっき"最後になる"って言ったのか。

 私はどこか夢見心地で、ぼんやりと考えていた。

「だからイエスかノーか、シンプルに答えをくれ」

「………う、うん」

 上ずった声でチラッと遠慮がちに見上げると、ゆずの真剣な瞳とぶつかった。

 見つめられるのが恥ずかしくて俯くが、それでも勇気を出してそっとゆずに手を伸ばした。

 一歩二歩と距離をつめ、彼の胸に顔を埋めた。おずおずと両手を背中に回して、震えた指先で彼のワイシャツを掴んだ。

「私も……ゆずが好き。だから、嬉しい」

 これが今、私にできる精一杯だ。

 彼の大きくて温かい手が、私の背をすっぽりと包み込んだ。そのままギュッと抱き締められる。

 ハァ、と彼が安堵の吐息をもらした。

 ふわっと懐かしい香りが鼻腔をくすぐった。

「……そうだといいなって……ずっと思ってた」

 やがて背中に回した手がゆっくりと動き、躊躇いがちに私の髪に触れる。

 おもむろに体を離されて、ゆずの手が私の頬を撫でた。

 彼の深い黒目に捉われて、私は視線を逸せなくなる。

 僅かな緊張と共に、心臓の鼓動が早くなった。次にどうなるのかを期待して、まぶたを閉じた。

 唇にほんのりとした温もりが落ちてくる。

 ゆず特有の懐かしい香りが、私の幸せと結び付く。

 子供の頃、ゆずの家に上がると決まってこの匂いがして、安心したような気がする。