これを恋と呼ぶのなら


 ゆずに慰められた二週間前を思い出し、しんみりとした気持ちに満たされる。

「なんで消したんだよ」

「え……?」

「ラインのメッセージ。凛恋、送ってきただろ?」

 何で、には答えられず、私は夜空を見上げた。

 雲ひとつ見えない濃紺の夜空には、小さな星々に囲まれて、変わらず満月が浮かんでいる。

「……月が」

「ん?」

「月が綺麗だなって、思って……。写真を送ったの」

 隣りに並んだゆずが私と同様に空を見上げた。

 何かしらを考える素振りで息を吐き、私はそんな横顔をひっそりと見つめていた。

 ゆずは「ふぅん」と相槌を打ったあと、ポソっと呟いた。

「……"月が綺麗ですね"」

「え……」

「お前知ってる? "月が綺麗ですね"って言葉の意味……」

 ゆずの台詞を受けて、私は夜空を照らす丸い月を見つめた。印象深いある文豪の逸話を思い出していた。

「"あなたが好きです"……だったかな?」

 ーー確か夏目漱石の。

 パシャ、と音がして、ゆずが満月の写真を撮る。

 そして私のスマホがメッセージ受信の音を鳴らした。

「お前が好きだ」

「………っ、」

「俺が一番欲しいのは凛恋だ。だから……。
 もうこんな中途半端な幼馴染み(関係)は嫌だ。
 お前の答えがノーなら、今日限りで諦める。明日からは連絡もしない」