これを恋と呼ぶのなら


「なに……? 仕事の話?」

 ゆずは真顔で眉を潜め、私の目をジッと見つめた。

「なんでそうなるんだよ」

「だって……。今のポジションって、それに最後になるかもって……。転勤か何かなのかなって」

「バカか! 幼馴染みのポジションって意味だよ!」

「えぇ……?」

 訳が分からなくて、首を捻るばかりだ。

「あのなぁ。俺は、お前が好きなんだよ! いいかげん伝わるだろッ?!」

 ーー……好き? それは……どういう……?

 一瞬、頭の中が真っ白になり、何も考えられなくなる。

 ゆずの声がよほど大きかったのか、狭い店内に響き渡り、暫時、静まり返った。

 ヒュウ〜、と誰かの口笛を耳で拾った。

 何処からか冷やかしの野次が飛ぶ。

「兄ちゃんやるなぁ〜」

「若いってイイねぇ〜」

 すぐ目の前に座るゆずの顔がたちまち真っ赤に染まる。

 彼はチッ、と舌打ちをつくと、「出るぞ」と言って立ち上がり、私の手を引いた。

「待って、まだお酒が」

「ンなもん、後で買ってやるから」

 店員さんに会計を済ませて、居酒屋を後をする。

 ゆずに手を引かれたまま、半ば強引に堤防まで連れて来られた。

 堤防の奥を流れる広大な川を見つめ、私は目を細めた。