これを恋と呼ぶのなら


 その枠組みを取っ払いたかったはずなのに、私は殻を破れずまた閉じこもってしまう。

「そうだよな」

 抑揚のない声でゆずが投げやりに言った。

 ズキ、とまた胸の奥が軋む。

 自身の臆病さに嫌気が差し、自己嫌悪の谷はさらに深さを増した。

 告白のチャンスをなくした。

 逃げなければ、あの子みたいに()えたかもしれないのに……。

 グラスから手を引き、私は湿った手をお絞りで拭った。

「……なぁ、凛恋」

 改まった口調で再び名を呼ばれ、私は弱々しく目を上げる。

「俺とお前がこうして飲むのは、今日が最後になるかもしれない」

 ーーえ。

「と言うか。場合によっては……もう連絡も、できないかもしれない」

 苦々しく眉を寄せる彼を見つめ、私は唇を震わせた。

 ーー何で? どうして??

 問いは言葉にならず、私の頭をぐるぐると駆け巡った。

「俺はずっとバカみたいに今のこのポジションを守ってきたんだ。
 多分……、それを失くすのが嫌で。平気な振りして逃げてきたんだと……思う」

 ーー……?

 私の耳は、ゆずの話を真剣に聞いているはずなのに、言っている意味が理解できない。

 私は首を傾げた。