これを恋と呼ぶのなら


 ああ、と嘆息と同時に唸り、ゆずが頭をかいた。

「……まぁ。俺はモテるからな」

「へぇ……」

 若干ふて腐れて答える私は、可愛さのかけらもない。

「返事、したの?」

「したよ」

 ーー何て?

 とは、やはり聞けない。

 臆病な私は口を噤むばかりだ。

「はい、お待たせしました〜」

 いいタイミングで"ゴト"と音を立て、店員さんが生ビールとカシスオレンジをテーブルに並べてくれる。

 ゆずはジョッキを持ち上げて、手を添えただけの私のグラスに、コツンと合わせた。

 彼の一挙一動をぼんやりと見つめていた。

 乾杯も何も言わずに、ゆずが生ビールを半分まで一気する。

 ジョッキをテーブルに戻し、大人しい口調で彼が言った。

「……こういう場所で話す内容じゃないかもしれないけど」

「……え」

「お前、俺のこと好き?」

 ストレートに聞かれて、ドキンと心臓が跳ねる。

 私はグラスに手を添えたまま曖昧に頷き、無難な言葉を続ける。

「そりゃあ……幼馴染みだし」

 "幼馴染み"という言葉は実に便利なものだと、この時初めて気が付いた。