食器棚で隠れて、そらくんの様子はうかがえない。
聞こえなかったかな? と思って、もう一度口を開いて尋ねようと、息を吸ったとき。
「寂しいよ」
という声が、私の鼓膜を震わせた。
ざわっ、と、鳥肌が立った。
だって、その声は、
本当に寂しそうで、
何かを求めているような、
甘えるような、
そんな感じがしたから。
「え……っと、その……」
な、なんか、まずいこと聞いちゃったかな、と思って、少し戸惑う。
自分で聞いておいて、返す言葉が見つからなくなってしまった。
口ごもっていると、キッチンからそらくんが出てきた。
「あのさ」
そう言ったそらくんは、無表情。
真顔が、ゆっくり、こちらへ近づいて。
「そ、そらくん?」
どうしてか怖くなって、じり、と退いて。
「最初からずっと思っていたけど」
口以外のパーツは一切ピクリともせず、
じわじわ迫り来る、長身。
「あ……」

