あそっか、彼女が繁華街に来るのは、その顔になったときだね。

ぎゅ、と唇を噛み締めて、つらそうに顔を歪めて。

様子がおかしいのは、その表情と、強張った肩と、震えるふたつの拳。


「どうしてあなたなのかしら」

「……」


嗚呼、これは相当、衰弱しているね。


傷付いて、心に穴が空いて、

とてもとても、

苦しそうで、寂しそうで。


ここにいる愛莉はもう、ぼろぼろだった。



「どうしてっ……!どうして今、このタイミングで、あなたがここにいるの……」



あ、手に入る。

直感的にそう思って、俺は、彼女を、

揺らす。



「運命、かもね?」


頬の筋肉が緩む。

近づいて、手を伸ばして、距離を埋めて。

ゆっくり、慈しむように、彼女のすべてを、

包み込む。



「どうして、こんなに、寂しいの……っ」

「俺も、寂しい」


そうだよ、いい子だね。


もっと、もっと。

もっと、すがって。




「抱いて」




そう鳴いた彼女は、

俺の背中に、

その手で、


しがみついた。