……────ネオンが煌めく夜の街。


愛莉の音の虜になってからは、遠ざかっていたけれど。

フラれて以来、週末の暇つぶしになっていた。


中学んときからそういう付き合いのあるダチと、ふらふらテキトーにさまよって、口説けそうな女どもの肩を叩いて。

さあクラブへ、と定番の流れになったとき、視界の端で捉えてしまった、蝶。


あ、と思った瞬間にはもう、無意識に足が飛んでいた。


うしろで仲間たちが、おい!どこ行く!と叫ぶ声が右耳に流入したけれど、左耳から流出した。


角を曲がったら、その背中はたった50メートルほど先にあって。


うつむきがちにとぼとぼ歩く華奢な後ろ姿。

まるで、羽が破れて瀕死な状態のままかろうじて飛んでいるようだ。



「愛莉」


ぽん、と肩を叩けば、はっ、と息を呑む音がして。

恐る恐る、といった具合でそーっと振り返ったならば、途端にその目は丸くなる。



「……しょー、くん……」

「奇遇だね」


また、泣き腫らした瞳だった。