「なに?」
「場所変えよう」
「え、場所?」
ここは埃っぽいから、と言って立ち上がると同時に、
っくしゅん、と激しく息を吐き出した。
「……」
「……かわいい、」
驚いてついじっと見入ってしまった私と目が合って、少し恥ずかしそうにそっぽを向くそらくん。
「……行こう」
「う、うん!」
パタパタとお弁当箱をしまう。
そして、先をゆくそらくんを追いかけた。
ついたのは裏庭。
傾斜になっている芝生といくつかの樹木があるそこは、静かで落ち着く空間だった。
「小さいけど」
そらくんは自分のハンカチを広げて緑の上に敷く。
そうして自身はその隣に座り、こっち、と私を手招きする。
「えっ、ハンカチ汚れちゃう!私は別に気にならないから、直で大丈夫だよ?」
そう言ったら、なぜかムッとして。
「……あいつの言葉には甘えるのに」
「え?」
あいつの言葉?
「夏祭り、“お言葉に甘えちゃう”って、あいつには言ってた」

