それなのに愛莉のせいで、その蓋が開いてしまったんだ。
「……愛莉のバカっ……」
そんなそしりごとは、私以外、誰の耳にも入ることなく、空気になった。
翌日、私は愛莉をさけた。
お昼休みも、移動教室も、部活でも、一度も口をきかなかった。
その翌日も、その翌日の翌日も、話さなかった。
しばしば愛莉は何か言いたそうにこちらを見るけれど、私は絶対に、視線を交わさなかった。
そんな意地を張ってから、いつのまにか1週間が過ぎた。
時間が長く感じた。
私たちの異変はクラスメイトも察しているみたいで、必要以上に介入してくる人はいないけれど。
「愛莉ちゃん、一緒にお弁当食べよ!」
「今度、うちら行きつけのカフェ連れてってあげる〜」
「ね、愛莉ちゃんはこの動画観たことあるー?」
愛莉の周りには、ちゃんと人がいた。
やっぱり、こういうところで、私と愛莉の格差を実感する。

