思わずゆるんだ手首を掴まれ、離せ、という一言が俺にぶつかった。


「ねえ、自分の気持ちもろくに伝えられないやつに邪魔された俺の気持ち、わかる?」

「っ……!!」

「ただでさえ愛莉にフラれた根本的理由がお前なのにさあ、なんで別の女関係までずべこべ言われないといけないわけ?」

「……は?根本的理由……?」


眉間に力が入る。

俺が原因で振られたって、どういう意味だ。


しかもこいつ、開き直りやがって。

圧倒的にでかい態度のこいつが心底ムカつく。


「あーそっかそっか、お前は鈍感だったね。とにかく、そんなに手に入れたいなら」


ぐっと近づき、耳元で囁かれたのは。


「どんな手を使ってでも奪えよ、この俺から」

「……っ」

「くくっ……美術の課題、がんばって♪」


馬鹿にするようにふっと微笑み、じゃーね、と手を振って教室を出て行った。



取り残された俺たち。


しん、と沈黙が流れた。


そして、今に至る。