俺がフラれたことはあっという間に学校中に知れ渡った。

あのとき、ビンタの瞬間をたまたま見た生徒がいたらしい。



「ねぇ、そんなに好きだったの?」


行為が終わって乱れた制服を整えながら、谷間女は口を開いた。


「何が?」

「愛莉ちゃん」


どんなに単細胞な女でも、この類のことになると鋭い。


「なんで?」

「ここにいるのはあたしなのにぃ、しょーくんが見ているのはあたしじゃないから」


別にそんなこと、どうでもよくない?

誰を見ていようが、誰のことを考えていようが、この関係以上のものを求めてなどいないのだから。


「……どうだろ」

「もぉ、らしくない〜」


くすくす笑って、フラれたしょーくんもっと慰めたくなるぅ〜、と茶化す。


「愉しいから、いいでしょ?」

「まぁね」


そう言って谷間女はぐいっと俺のネクタイを引っ張り、ちゅ、と軽いキスをして。


「やっぱり、失恋の味がする」


ふふ、と口角を上げて、いたずらっ子のような表情をする。