うつむきがちなその表情は、よくわからない。
「お世辞なんて言わないよ〜」
あははっと昨日みたいに笑えば、愛莉のようにつられて笑ってくれると思ったけれど。
「ハナに言われると、すごく照れる」
予想外の反応に、へ?と拍子抜けた声が漏れた。
よく見ればほんのり染まった頬が、その発言に説得力を持たせる。
か、可愛い……!
「うふふっ」
「なんで笑う」
「今のそらくん、格好いいのに可愛い!」
「っ……い、意味わからない」
そうしてふいっと背を向けて。
大きな背中は早足に遠ざかる。
「あっ、そらくん待ってよ〜」
ちらりと目の端でこちらを見て、ぱちりと視線が交われば、するりと照れ臭そうに外す。
まだその足は歩みをやめずに、どんどん前へ進んでゆく。
でもやっぱりそらくんは優しいから、この距離はすぐに縮まった。
そして肩を並べて、……違った、彼の肩と私の頭を並べて歩く。
「後夜祭も楽しみだなあ」

