「安心してよ、まだ1ミリも触れてないから」
「……つーか、そもそもお前、愛莉と付き合ってんの?」
「ううん。意外と手強いよね、愛莉って」
手強すぎて、そろそろ強行手段かなと考えているところだよ。
「付き合う前から手を出すな」
「だから1ミリも触れてないんだって」
「……あっそ」
「もー、そらっちってば、何でそんなに人間不信なわけ?」
「お前不信だ」
なにそれおもしろいね。
「そんなに俺がきらいなんだ?」
なんかムカつくなあ。
でもなんか、おもしろいやつだよね。
ごくり、と炭酸の刺激を味わう。
「やっぱりお前は危険だ」
俺を見ずにぼそっと呟かれたその言葉は、鋭い刃《やいば》のように冷たく、尖っていた。
「危険って?」
「付き合ってもいないのにそういうこと考えてる時点で、危険」
「そう?男子高校生ってこんくらい盛んな方が健全だと思うんだけどなー」
「……あっそ」
そらっちはため息まじりにそう言い放ち、身を翻して歩き出す。

