見れば、この男の眉間はさらに深く刻まれている。
思わず笑みがこぼれそうになるのを耐え、なんてことなく軽やかに、言葉を投下する。
「すごくいい鳴き声なんだよ」
「は?」
そんなの知るかよ、とでも言わんばかりの表情になって、後ろに身を引き俺から距離を取る。
嗚呼、あんなに美しい音なのに。
この男へは届いていないのか。
どこまでも鈍感で哀れな男よ。
心底呆れたが、でも今はその方が都合いいな、と思った。
「ふーん、知らないんだ?色っぽくて最高なのに」
「……い、っ」
何を妄想したのか、突然耳まで真っ赤に染まった目の前の顔。
やっぱり我慢できずに噴き出してしまう。
「ぷっ。ねえ、今なにを考えたからそんなに真っ赤なの?」
「べ、別に……」
「喘ぎ声?」
「あ"っ……!? ば、ばっかじゃねーの」
「ぷはははっ」
腹を抱えて笑う俺に、通りがかりの生徒たちが何事かと視線を向ける。
そらっちは気まずそうに、声デカすぎ、とぼやいて一歩こちらへ近寄る。

