「一度夢中になると手に入れるまで止まんないんだよね」
俺がそう言うとそらっちは、パチリと静かに瞬いたと同時にふっといつもの穏やかな空気をまとう。
「……あっそ」
ため息まじりに聞こえた音。
「そらっち、絶対信じてないでしょー」
「……」
一口、サイダーを飲む。
そらっちはただ、俺を見つめていた。
「俺さー、彼女に出会って、つまらない日常から解放されたんだよね」
「……、」
すんなり思うようにさせてくれない彼女は、俺のプライドを簡単に粉々にし、そして俺との間に高い壁を築き上げた。
その壁を越えたくて、しがみついて、夢中になっている現在。
今まで味わったことのない、この感覚。
堪らなくおもしろくて、クセになるよね。
「ねぇそらっち、知ってる?」
「何を」
眉をひそめるそらっちへ、ぐっと近づいて。
秘め事を打ち明けるように、その耳に小さく。
「恋い焦がれた彼女の音色」
「……こえ?」

