「……げ、」
つい最近、というかほんの数時間前に聞いたばかりの彼の声はファ。
「そらっちじゃん、奇遇だね」
昼休みぶり、と軽やかに言うと、その長身はいつものように眉間にしわを寄せる。
「……そう言えばお前、」
「んー?」
そらっちから話題を振るなんて珍しいなーと思いつつ、その声色から何を言い出すのかだいたい想像がついた。
「文化祭、何する気だ」
「……んー、」
ゴクッと刺激と爽涼を一口飲んで、焦らすように少し間を置く。
「……」
「ふふっ」
「……おい、」
「ひ・み・つ♪」
俺は口角を思いっきり上げて、とびきりの笑顔で、ソとラとシの音階を。
「チッ」
「おー怖っ。まあまあ、そんな怒んなって」
わざと逆撫でてみるも、それに勘付いたそらっちはハーッと息を吐いて顔を背けた。
背けられた顔は、不安と悔しさが入り混じって曇る。

