「くくっ……」
思わずこぼれた自嘲の音は、誰にも聞かれないほどに小さく、そのまま地面に落ちた。
釣れない彼女をどう口説こうかと考えている今この瞬間も、愉しかったりする。
思い通りにいかないって、こんなに感情を奮わせるんだね。
まるで心臓を指でつつっとなぞられて、ぞわっと鳥肌が立つような、このむず痒い感覚。
拒まれれば拒まれるほど、燃える。
夏はもう終わったはずなのに、じりじりと焦がれてゆく、この気持ち。
その熱を冷ますように左手に持つ炭酸を傾けたら、すうっと刺激と爽涼が素早く喉から胃の奥まで浸透した。
立ち止まるのに飽きた俺は、ペットボトル片手にあてもなく中庭をさまよう。
サラリと秋風に揺らされる草木は、ドとレの狭間《はざま》をゆらゆらと奏でる。
植木鉢に咲いたコスモスの花弁がひとつ、空中をふわりと舞う。
その花弁を目で追えば、白肌の黒髪にぶつかって、思わず口からミの音が鳴った。
「あ」

