もっと話してほしい。
もっと声を聞きたい。
もっとこっち見て、鳴いてよ。
そう思って笑顔を向けるのに、さらりとかわされて。
彼女はなかなか、振り向かない。
いつもそのまっすぐな音を鳴らす先には、
そらっちがいた。
それに気づくのは容易くて、
真っ先に思ったことと言えば、
「手に入れたい」
ただ、それだけ。
ブブッ、と、太ももにマナーモードの振動が伝わった。
ポケットの中の四角いそれを取り出してメッセージを確認する。
「……うわ、」
嗚呼、また。
またそうやって、俺にはその音を聞かせてくれない。
『ごめん無理』
素っ気ない5文字は、俺が朝送った映画の誘いの返事。
愛莉の気持ちは当然わかっていたけれど、手に入れたい一心で、ひたすら攻めてみたものの。
これで4度目の断りが、それはもう結構、プライドにダメージを喰らわせる。

