俺は言葉に詰まって、小さくなっていく背中をただただ見送ることしかできなかった。 「……かん、ちが、い?」 かすれたつぶやき声は深縹色の空へ、蒸発した。 蒸発した方へ目線を移し、一点を見つめる。 「そういえば……」 昔、一度だけ、あった気がする。 愛莉がその表情になったこと。 あれは確か、中学生くらいの頃だったと思う。 ちょうどこの時期、野外学習で同じグループになったことがあって────……