暗い自室へ入りそのままベッドへ倒れる。
目を閉じて浮かぶのは、ハナの顔。
『かっこよくて、何でもできて、ちょっぴり意地悪だけど、王子様みたいな人』
彼女は星の見えない夜空を見上げていた。
まるでその黒いキャンバスに、
好きな人が描かれているかのような、
熱い眼差しだった。
それは、
あいつを見つめる眼差しと、
同じだった。
「あー……」
なんであいつなんだ。
俺のこと気安くそらっちとか呼びあがって。
やたらとハナに手出しやがって。
あいつが、気に食わない。
でも、そんなあいつと話すハナの表情は、
いつにも増して幸せそうだった。
ハナの好きな人は、あいつ。
胸の奥から込み上がる、意味不明のもやもや。
悔しさに近い何とも言えない感情が込み上げてきて、どこかむず痒い。
愛莉は「いつものそらじゃないみたい」と言ったが、まさにその通りだ。
平穏だった俺の感情は今、波打つように渦巻いて、乱れている。

